2019.04.18
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“ピロリ菌” 響きは可愛いのですが、その正体とは…
正式名は「ヘリコバクター・ピロリ」といいます。
・ヘ リ コ …「らせん」「旋回」という意味。ヘリコプターのヘリコと同じです。
ひげの部分も回転させて移動します。
・バクター… バクテリア(細菌)のこと。
・ピ ロ リ … 胃の出口(幽門)をさす「ピロルス」からきています。
ピロリ菌は、胃の幽門部から初めて見つかりました。
ピロリ菌発見の歴史
西オーストラリア大学のロビン・ウォーレン名誉教授とバリー・マーシャル教授がピロリ菌を発見し、2005年ノーベル医学生理学賞を受賞しました。当時、病理医だったウォーレン名誉教授は1979年、胃炎患者の胃粘膜に小さな曲がった未知の細菌(ピロリ菌)を発見。その後、当時消化器内科研修医だったマーシャル教授との共同研究で100人の患者の組織を調べた結果、胃炎や胃・十二指腸潰瘍を患っているほとんど全ての患者でピロリ菌を確認しました。
そして試行錯誤の末、1982年にはピロリ菌の分離培養に成功しました。マーシャル教授自身がピロリ菌を飲む実験により急性胃炎が起こることを確かめたエピソードは有名な話です。それまで消化性潰瘍などはストレスや生活習慣が主たる原因と考えられていましたが、
これにより、胃炎や胃・十二指腸潰瘍はピロリ菌の感染が引き金になることが明らかと
なりました。この発見はピロリ菌を除去する除菌治療へとつながり、胃がんや再発を
繰り返す胃・十二指腸潰瘍の治療に革命をもたらしました。
*引用:大塚製薬HP 健康と病気「健康な胃をとりもどそう」より(https://www.otsuka.co.jp/health-and-illness/h-pylori/about/)
胃がんの98%はピロリ菌感染が原因
ピロリ菌は胃がんの最大原因であるといわれていますが、胃潰瘍や十二指腸潰瘍
なども引き起こすことが分かっており、主に4~5歳以下の小児期(まだ免疫力が
弱い頃)に、汚染された水・食べ物・唾液から感染するとされています。
ピロリ菌に感染すると…
ピロリ菌に感染したほとんどの方が胃炎を起こします。除菌をしない限りピロリ菌は胃の中に住み続け、慢性的に炎症が続き(慢性胃炎)、胃粘膜のひだがなくなり、萎縮(血管が透けて見えるほど薄くなる)した状態になります。これは胃粘膜を防御する力が弱まり、ストレスや塩分の多い食事、発がん物質などの攻撃を受けやすい無防備な状態です。さらに進展すると胃がんを引き起こします。
ピロリ菌の感染率
年齢が高くなるほど感染率が高いようですが、これは前述したように小児期の衛生環境が影響していると考えられています。環境の整った現代では、感染者数は低下しています。
とは言え、若い年代の方も2割程度は感染しているので、年代に関わらず一度は抗体検査を受けることをオススメいたします。
*資料:平成26年度ヘリコバクター・ピロリ抗体検査(医学協会データ)より
人間ドックや健康診断のオプションとしてヘリコバクターピロリ抗体検査や胃がんハイリスク検診(ABC検診)をお受けいただくことができます。お気軽にお問い合わせください。
*全国がん登録…がんと診断された患者の情報を国が集計・分析し、一元管理する新たな仕組み。
これまで都道府県などが任意で情報収集し公表していたが、2016年にがん登録推進法が施行され、全ての病院などに届け出を
義務付けた。データの収集・分析は「国立がん研究センター」が担う。2016年の罹患数は全国で99万5132人。
男性は1位:胃がん・2位:前立腺がん・3位:大腸がん、女性は1位:乳房がん・2位大腸がん・3位:胃がん の順に多かった。